我々は、米国投資適格債のオーバーウェイト幅を拡大する。スプレッド(米国債との利回り格差)は、3月30日にオーバーウェイトを開始した時の290ベーシスポイント(bp)から縮小し、現時点では200bpを若干下回っている。にもかかわらず、我々は同資産クラスをまだ魅力的とみており、12月までに経済機能が安定的に正常化するという基本シナリオを前提に、150bpまでの縮小を予想する。楽観シナリオでは、年末時点でおよそ100bpもあり得ると想定している。

最近の動きを見ると、市場は我々の楽観シナリオ(欧米では6月末までに経済機能の正常化)を織り込んでいく可能性が高まっている。その理由は、第1に、経済活動再開に向けた具体案を発表する国が増えていること。第2に、抗ウイルス治療薬が医療システムの負担をある程度軽減できるかもしれないとの期待を抱かせる証拠が発表され始めたこと。第3に、各国中央銀行のさまざまな支援策の結果、クレジット市場が流動性危機を起こすことなく正常に機能し続けていることだ。

こうした好材料が続けば、多くの専門家が現在予想しているよりも景気回復が早まるかもしれない。しかし、今後の動向に関する不透明感はなお拭えない。欧米の株式市場は、我々の基本シナリオと楽観シナリオの中間をすでに織り込んでいるが、株式指数全般に対する我々のスタンスは中立である。現時点では、ポートフォリオに加えるリスク資産を拡大させる方法としては、投資適格債を増やすのが最善策とみる。

その理由として第1に、米連邦準備理事会(FRB)の緊急資金供給策による社債購入で、投資適格債は十分にサポートされているからだ。しかも、直近(4月9日発表)の資金供給策では、最近投機的格付に引き下げられた社債(フォーリン・エンジェル)の購入が盛り込まれた。現在は、投資適格債のおよそ50%が「BBB」と、ハイイールド債の領域に近いことから、格下げでFRBの買い支えがなくなる投資適格債が増えるのではないかとの懸念があったが、対象購入範囲の拡大でその懸念も和らいだ。政策決定者は、今回の危機の前には業績が好調だった企業が、資金の流動性の悪化から支払い不能にならないだけの十分な措置を講じている、というのが我々の現時点での見解だ。第2に、企業行動も、自社株買い、配当、設備投資の中止など、債券保有者に有利な動きが目立ってきた。投資適格債の新発債市場が引き続き強いため、デフォルトも限られるだろう。3月の新発債発行額は2,610億米ドル(借り換え関連の発行額800億米ドルと流動性関連の700億米ドルを含む)と、月間発行額としての記録を更新した。第3に、スプレッドが最近縮小したことは確かだが、過去を振り返ると、クレジット・スプレッドが現在と同程度に拡大していた時には、クレジット投資家はその後魅力的なリターンを享受した。1988年以来、スプレッドが現在水準(200bp弱)を上回った月は37カ月あった。その後の6カ月のトータルリターンがプラスとなったのは73%で、リターンの中間値は4.4%だった。

米国投資適格債では、通信、公益、生活必需品など、景気感応度の低い発行体を引き続き推奨する。投資家は、信用格付が今後投機的水準に引き下げられそうな発行体には慎重姿勢で臨み、特にFRBの資産購入要件(信用格付や満期などの制限がある)を満たさなくなりそうな発行体と債券の購入は回避することを推奨する。外国発行体の債券も購入対象にはならないだろう。さらに、米国ハイイールド債と米ドル建て新興国国債のオーバーウェイトを継続する。

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