何が起きたか

28日(水)、リスク資産が大幅に下落した。S&P500種株価指数は3.5%、ナスダック総合指数は3.7%それぞれ値を下げて取引を終え、ユーロ・ストックス50指数も3.5%下落した。市場ではボラティリティ(相場の変動率)の上昇を織り込む動きも見られ、米国株式のボラティリティ見通しを反映するVIX指数は7ポイント上昇して40.5と6月以来の高水準を付けた。これは向こう1カ月、S&P500種株価指数の1日の変動率が約2.5%になるとの予想を織り込んでいる。一方、ブレント原油価格は5%安の39米ドル/バレルとなり、石油関連銘柄も売られた。新型コロナ関連規制の影響を受けるその他セクターのパフォーマンスも市場平均を下回り、米航空株は約4%下落した。 

こうした動きの背景には主に次のような要因があると見ている。 

  • 新型コロナ関連規制の強化: ブルームバーグは、ドイツのメルケル首相がバーやレストラン、娯楽施設の営業を1カ月間禁止する措置を発表すると報じた。フランス政府は、全国的な都市封鎖を30日(金)から実施すると発表した。スイス当局も飲食店の営業時間と会合の人数制限を発表している。米国では、新型コロナ関連の入院者数が約10%増加し、一部地域で制限が強化される可能性が高まっている。収束の気配が見えないウイルス感染拡大と新たな規制導入は、景気の持ち直しや経済活動のコロナ危機前水準への回復ペースを遅らせ、場合によっては反転させる恐れがある。
  • 免疫持続しないリスクを示す研究結果: 英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが行った大規模な新型コロナの抗体検査の結果、陽性と判定された人の割合は6月から9月の3カ月間で26%減少した。この調査結果によって、ワクチンの有効性に対する懸念が高まっている。
  • 米国の追加経済対策実施は選挙後に:共和党と民主党の両指導部は、米国経済を下支えする追加経済対策の法案が、11月3日の大統領選前に成立する可能性がなくなったことを示した。ペロシ下院議長は両党の協議が物別れに終わったことを示唆し、トランプ大統領は、経済対策は選挙後に実施すると述べている。

今後の見通し 

感染再拡大に対応した地域的な制限措置は経済成長の下押し要因になるだろうが、次のような理由から、その影響の程度は今年前半よりも限定的になると考えられる。 

まず、消費者と企業は制限が多い環境に徐々に適用しており、新たな規制強化にも柔軟な対応が可能であると考えられる。こうした状況はすべての業種に当てはまるわけではなく、特に旅行やホテルなどのホスピタリティ業界や航空業界にとっては、対応手段が限られている。しかしながら経済全体にとっては、制限による影響は、年前半に比べると、絶対的というよりも相対的な需要ショックの様相が強いと見られる。

第2に、第3四半期の米企業の業績は堅調である。企業業績は予想を大きく上回り、大半の企業の第4四半期見通しは上方修正されている。これは業績のモメンタムが良好であることを示唆する。しかしながら、米IT大手が市場予想を下回る控えめな業績見通しを発表したことから、コロナ危機下で急増した企業のハイテク関連支出が減速するリスクが意識された。グロース企業の多くのバリ ュエーションが上昇する中、これら企業の株価は、わずかな業績下振れだけで下落する可能性がある。28日の取引では、グロース銘柄のパフォーマンスはバリュー銘柄を下回った。 

第3に、各国政府は地域的な都市封鎖実施で高まる失業への不安を軽減するため、財政支援の継続や拡充を図っている。例外は米国で、追加経済対策成立の遅れが、失業給付が失効する中で消費支出の重石になるかもしれない。 

最後に、人々のコロナへの不安が薄れている。このため、新たな規制を導入しても厳守されにくく、感染拡大の封じ込めが遅れる可能性があるが、一方では経済への悪影響が軽減されるだろう。 

世界で10種類のワクチン候補について後期臨床試験が行われる中、我々の基本シナリオでは、2021年第2四半期までに規制解除が始まり、2021年末頃までには企業業績が感染拡大前の水準に回復すると想定している。また、米国では、大統領選の結果にかかわらず、選挙後ほどなく大規模な追加経済対策法案が成立すると見込む。さらに、金融・財政政策はともに緩和的な状況が継続すると予想する。 

以上のことから、我々はリスク資産の下落局面は比較的短期で終わる可能性が高いとみており、投資家には自身の投資計画に沿 って投資を継続することを勧める。リスク資産は中期的には上昇するとの見方を我々は変えておらず、S&P500 種株価指数の2021 年 6 月末の目標値を、現在の水準を約 13%上回る 3,700 と設定している。 

投資家はどのように対応すべきか

  1. ボラティリティを活かした戦略。VIX 指数は 6 月以降で最高水準にある。過去の実績を振り返ってみると、利用可能な資金は一括して直ちに市場に投入するアプローチが最良の戦略であることがわかる。だが、タイミングを誤るリスクを避けたい投資家は、資金を分割して均等額ずつ定期的に購入するアプローチを進める。この戦略により、リターン獲得の機会を逃すリスクを減らしつつ、株価低迷時を通して投資を継続することで、より魅力的な水準での参入が期待できる。我々の基本シナリオでは、2021 年第 2 四半期までにワクチンが広く実用化されると想定しており、これにより経済の正常化と企業収益の急回復が実現し、次の上昇局面につながると見込んでいる。
  2. 次の回復局面での勝ち組に注目。3 月以降の株価回復は、超大型ハイテク株を中心とした比較的少数の銘柄がけん引役とな った。主要ハイテク銘柄で構成される指数が年初来で約 75%上昇したのに対して、S&P500 種株価指数はわずか 1%の上昇にとどまっている。市場の下落局面は、新型コロナの世界的感染拡大や世界経済の長期的な変化からの恩恵が期待できる、幅広いハイテク企業に分散投資を行う機会を提供すると考える。例えば、5G ネットワークの展開は現在勢いを増しており、5G 関連の様々な新技術を実現するイネーブラー企業と、直接的な恩恵を受けるプラットフォーマー企業の双方へのエクスポージャー構築が有望とみられる。また、エドテックやヘルスケア、変わりゆく消費者の価値観などを扱った新しい投資テーマである「Future of humans(人類の未来)」に関連した銘柄にも機会があると見ている。ハイテクセクター以外に目を転じてみると、ここ数カ月出遅れていたが、世界景気の回復が広がる中でパフォーマンスの上昇が期待されるセクターへの分散投資も検討を勧める。具体的には、米中型株やユーロ圏(EMU)の中小型株、新興国のバリュー株など、景気敏感銘柄に注目したい。
  3. ダウンサイドに備えたプロテクションを検討する。我々は先行きについてなおポジティブな見方を維持しているが、世界経済と企業収益の両方にとっての潜在リスクも足元で報じられている。
 

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