S&P500の目標水準を引き上げ
株式の上昇相場はこの先も続くと我々はみている。我々はS&P500種株価指数の目標水準を、2021年12月は4,500ポイント、2022年6月は4,650ポイントに若干引き上げた。
- S&P500 種株価指数構成企業の2021 年4-6 月期(第2四半期)の利益は、大きく落ち込んだ前年同期から80%以上増加し、コンセンサス予想を15%上回ると予想する。我々のS&P500 種構成企業の1 株当たり利益(EPS)予想については、2021 年は200 米ドル(前年比40%増益)で据え置くが、2022 年については5 米ドル引き上げ220 米ドル(10%増益)に上方修正する。これは、法人増税による4~5%の押し下げ効果を織り込んだ予想である。
- 家計の過剰貯蓄、民間設備投資の拡大、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和継続を背景に、株式の上昇相場はこの先も続くと我々はみている。これを踏まえ、S&P500 種株価指数の目標水準を、2021 年12 月は4,500 ポイントに(従来は4,400 ポイント)、2022 年6 月は4,650 ポイント(同4,550 ポイント)に若干引き上げた。
- 最近の景気敏感株とバリュー株からのローテーション(運用資金の移動)は行き過ぎと思われ、企業ファンダメンタルズとも整合していない。我々は引き続き一般消費財、エネルギー、金融、資本財といったセクターを推奨し、グロース株よりもバリュー株に妙味があると考える。
経済は堅調、利益は急増
経済は堅調、利益は急増
今週から米国企業の4-6月期(第2四半期)決算発表が始まるが、我々は今期も非常に好調な業績結果を予想する。S&P500種構成企業の第2四半期の売上高は前年同期比で15%増、利益は80%以上の大幅増加を見込んでいる。対前年比の利益成長率が極端に高いのは、コロナ禍で昨年第2四半期の業績が大きく落ち込んだためであることは明らかである。とはいえ、第2四半期決算は、四半期としては過去最高の好業績となる見通しだ。セクター別に見ると、エネルギー、金融、資本財といった景気循環セクターの力強い回復が伸びをけん引しているが、テクノロジーでも30%の増益を見込む。パンデミックの沈静化傾向と巨額の政府支援が大幅増益の主な要因である。
第2 四半期の見通しについては、S&P500 種構成企業の利益がコンセンサス予想を15%上回ると予想している。ボトムアップによるコンセンサス予想は、第2 四半期の企業利益を対前期比で8%減とみているが(図表1 参照)、これは合理的な水準ではないと考える。過去の推移を見てみると、冬場の寒波が去り温暖な季節が到来するに伴い、経済活動全体が活発化するため、第2 四半期のEPS は、通常、第1 四半期よりも7%程度高くなる。今年は、新型コロナの感染拡大が縮小に向かっているタイミングとも重なるため、第2 四半期EPS の上昇率は、例年よりもさらに大きくなる可能性が高い。例えばブルームバーグのコンセンサス予想は、第2 四半期の実質国内総生産(GDP)成長率を前期比年率9.2%増と見込んでいる。これは、四半期ベースでは2000 年以降で2 番目に高い伸び率となる。最近の経済指標もこうした好調さを裏付けている。例えば、航空券やレストランの予約件数は第2 四半期も改善傾向が続き、現時点ですでに新型コロナ前の水準と同等、もしくは当該水準を上回っている(図表2 参照)。消費者からもパンデミック前の普通の生活に戻りたいとの声が高まっており、家計の過剰貯蓄の状況も変わらず潜在需要の顕在化が期待されることから、今後も堅調な消費が続く見通しである。
これまでの状況と今後の動向
これまでの状況と今後の動向
第2四半期の決算発表はまだ序盤だが、発表を終えた18社のうち90%が全体として利益予想を約18%上回り、順調な滑り出しとなっている。セクター別では、ここ数四半期の決算発表と同様、第2四半期も景気敏感セクターが好業績を主導すると予想する。
直近数回の決算期を振り返ると、事前予想を上回った企業の比率が高い好決算となっても、必ずしもそれが株価の上昇には直結しなかった。今回もそうなる可能性は排除できない。しかし、投資家は大局的な視点を持つことが重要である。好業績発表直後の反応がまちまちでも、S&P500種株価指数は今年17%上昇している。2021年のボトムアップ業績予想が15%引き上げられたのも、恐らく偶然ではないだろう。セクター別の年初来パフォーマンスではエネルギーと金融が最も好調で、両者とも増益率が最も高い。対照的に、パフォーマンスが最も振るわないのは公益事業と生活必需品であり、当然のことながら、これらの増益率は最も低い。結局のところ、株価を支えるのは企業の利益である。だが、決算発表直後の市場の反応には、こうした全体像が反映されていない可能性がある。
先行きに対する経営陣のコメントも重要である。投資家は、デルタ株による最近の感染増加が業績に与える影響に注目するだろう。感染増加は現時点では経済活動に影響を及ぼしていないと我々は見ているが、経営者が見通しに対するリスクとして、デルタ株の感染拡大を挙げる可能性がある。また、人件費、輸送費、サプライチェーンといったコストの増加も懸念材料だが、これらのコスト増加は増収によって十分に補われており、純利益率も過去最高を記録するとみられる。最後に、減価償却費に対する設備投資の割合が極めて低いことから、経済活動の正常化が続けば、設備投資を拡大する企業が増えることが予想される(図表3参照)。また、企業利益が堅調であることから、増配や自社株買いを積極化する動きも期待できる。
上値余地はまだある
上値余地はまだある
業績見通しの上方修正は過去35年で最高水準にあるが(図表4参照)、我々は依然コンセンサスEPS予想は低すぎると考えている。経済は堅調に推移しており、成長率は今後減速するも、数四半期間は平均を上回るペースで拡大するだろう。企業は旺盛な需要に応えるため、稼働率を高め在庫の積み増しを急いでいる。また、コロナ禍で積み上がった家計貯蓄の取り崩しが引き続き個人消費を後押しするだろう。FRBが金融政策正常化の動きを開始する可能性はあるが、企業と消費者に引き続き潤沢な資金を供給するため、今後の金融引き締めは緩やかなペースで行われるだろう。したがって、米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数でみた企業の景況感は、今後も非常に健全な水準で推移するとみられる(図表5参照)。
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