• 2月下旬、外国人投資家による日本株の力強い買いから、日経平均は30年ぶりの高値を付けた。
  • 市場の流動性は非常に高いものの、バリュエーション(株価収益率(PER))がここからさらに拡大する可能性は低いと判断する。
  • 日本企業の増益率は2022年3月期の+40%から2023年3月期には+4%へ減速すると予想しており、株価のもう一段の上昇は難しいかもしれない。
  • 出遅れ銘柄を推奨。これらの企業は、昨年新型コロナウイルスから打撃を受けた分、今年は回復する見込みが高いからだ。ハイテク銘柄のバリュエーションは妥当な水準にあるとみている。

我々の見解

日本株式市場は過去6カ月で30%を超える上昇となり、大半のグローバル市場をアウトパフォームした(図表1を参照)。この力強いパフォーマンスは、昨年7-9月期と10-12月期の企業業績が事前予想を上回ったことや、中国の景気回復に対する日本経済の感応度の高さによるものと考える。

しかし、こうした好要因の大半はすでにハイテク銘柄と景気敏感株に織り込まれていると我々は考える。日経平均株価の12カ月先予想ベースの株価収益率(PER)は22倍を超えている(図表2を参照)。我々の予想によると、2023年3月期の増益率は3~4%と、2022年3月期の40%増益予想に比べるとかなり穏やかな水準に戻りそうだ(図表3を参照)。2021年半ば以降は新型コロナワクチン接種が本格化し、日本経済も正常化に向かうと見込まれることから、その恩恵が期待できるサービスセクターなどにシフトすることを勧める。

日本企業の10-12月期業績は予想を上回った。純利益は前年同期比で17%増益と、7-9月期の同32%減益から急回復した。2020年下期の経費削減努力に加え、自動車、機械、半導体の需要拡大が寄与し、利益はV字回復を遂げた。

2022年3月期の企業業績については、下期の伸びは上期に比べて鈍化すると我々は予想している(図表3を参照)。その理由の一つは、2020年10-12月期利益率が新型コロナ前の水準を回復したため、今後6~10カ月でさらなる利益率の拡大が見込みにくいことだ。 2020年10-12月期業績が好調だったのは、とりわけ政府の資金援助(雇用調整助成金など)、中国の産業需要の急回復、一時的な経費削減策などがあったことも要因となっている。こうした背景から、今年も日本の景気回復は続く見通しの一方、企業の増益ペースは鈍化するだろう。

日本企業の長期的な利益動向と株価との関係をみると、日経平均株価は過去6カ月で新型コロナからの回復を急速に織り込んだものの、利益予想はなお2019年の水準を下回っている(図表4を参照)。ハイテク銘柄は、デジタルへの移行(クラウド・サービス、5G、電気自動車)の恩恵を明らかに受けており、これまでの株価反発をけん引してきた。だが、多くの日本のハイテク企業は、常に高成長を維持している米国のインターネット・プラットフォーム企業とは異なり、そもそも景気変動の影響を受けやすい。我々の最近のレポート「コロナ後の正常化に備える」(2月3日付)で論じたように、2020年に新型コロナの打撃を被った日本企業の業績が2021年には回復に向かうと予想する。したがって、現時点ではこうした銘柄の方がハイテク銘柄よりも投資妙味があると我々はみている。

昨年のハイテク・セクターの反発のほかに、過去3カ月でパフォーマンスが好転したセクターもある(エネルギーや資本財など)。景気敏感株に対する投資家の期待感は、新型コロナ危機前よりも今の方がかなり高くなっていると思われ、現在の業績回復予想をさらに上回るのは難しそうだ。次のローテーション先は、航空、ホテル、娯楽などの伝統的なサービス・セクターになりそうだ。2021年下期から始まるワクチンの集団接種の恩恵を受けやすいとみられるためだ。世界中の政府によるグリーン・テクノロジーと経済再開への取り組みを背景に、当面は「グリーンテックへの投資機会」と「コロナ後の正常化に備える」という投資テーマを引き続き推奨していきたい。

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居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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