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  • 米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)が金融政策スタンスを緩和バイアスに転換したことを受けて、我々の戦術的通貨配分を変更した。FRBとECBが利下げを始めると米ドルとユーロはともに下落するリスクが見込まれるため、両通貨をオーバーウェイトからアンダーウェイトに引き下げた。
  • またこの金融緩和路線を受けて、スイス・フランと豪ドルのアンダーウェイトを解消した。FRBとECBが利下げに踏み切ればスイス・フランは強含む可能性がある。また、FRBの金融緩和により、世界的なリスク回避に対するヘッジとして豪ドルをアンダーウェイトにする必要性も低下する。
  • 最後に、高金利の新興国通貨に対するオーバーウェイトの幅を拡大する。世界的な金融緩和と比較的安定した経済情勢はキャリー取引に追い風になるとみている。

米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)が金融政策スタンスを緩和バイアスに転換したことを受けて、我々は戦術的通貨配分を変更した。欧米中銀の姿勢転換は我々にとって想定外であった。足元の米国と欧州の経済情勢は必ずしも金融政策を転換する根拠とはならないと考えられるからである。両地域の国内総生産(GDP)は潜在成長率近辺で推移する見通しであり、足元のインフレ率も懸念するほどの水準ではない。労働市場と賃金の伸びも非常に力強い。景気が底堅い局面での金融刺激策の導入は、我々の通貨戦略にも影響を与えたため、見直しを行うこととした。

第1に、FRBとECBが利下げを発表するときにユーロおよび米ドルのオーバーウェイトは避けたい。よって、米欧の利下げ開始に備え、我々は両通貨をアンダーウェイトにする。ただし、もしFRBの利下げが景気後退に伴う影響の軽減策として実施される場合は、米ドルが持つ安全資産としての側面を踏まえ、米ドルのオーバーウェイトを推奨する。

一方、利下げ開始により見込まれる他の資産への影響にも注目していく。まず、金融緩和へのシフトにより、安全通貨の代表格である日本円とスイス・フランに加え、新興国通貨も買われるだろう。よって、新興国市場の高利回り通貨バスケットのオーバーウェイト・ポジションを引き上げた。またユーロのオーバーウェイトに対するスイス・フランのアンダーウェイトを終了し、ユーロをノルウェー・クローネに対してアンダーウェイトとする。我々は為替ヘッジ無しで日本株をオーバーウェイトにしているが、それに伴う日本円のオーバーウェイトは良好なポジションであると考え、変更を行わない。

また、豪ドルのアンダーウェイトを解消する。これまで米ドルに対する豪ドルのアンダーウェイトには2つの働きがあった。1つは、米中貿易摩擦の激化に対するヘッジとしての役割であり、もう1つはオーストラリア準備銀行(RBA)の利下げに対する通貨市場の動きから利益を確保するためである。RBAは2カ月連続で利下げを行い、貿易摩擦もやや緩和した。さらに、最近のFRBのコミュニケーションはFRBプット(相場が下落するとFRBが金融緩和策により相場を支えてくれるとの安心感)を示唆する内容で、ヘッジ通貨としての豪ドルの効果が後退した。オーストラリアの政策金利はすでに過去最低の1.00%をつけているため、このポジションを手仕舞う。まだ利下げ余地は残されているが、FRB ほどではなく、11 月の25 ベーシスポイント(bp)の利下げ予想も短期市場で概ね織り込み済みである。また、英ポンドに対する豪ドルのアンダーウェイトを米ドルのアンダーウェイトに切り替える。ブレグジット(英国のEU 離脱)の行方が最終的に明らかになれば英ポンドは一段と上昇するという我々の見方は変わっていない。

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