• 我々は今月、キャリー(金利収入)戦略の対象を拡大した。さらに、グローバル戦術的資産配分において、米ドルに対する英ポンドのオーバーウェイトを追加し、戦略的(長期的)に為替ヘッジなしで英国株を保有するという投資判断を強化した。
  • 我々は2020年もキャリー戦略を推奨している。具体的には豪ドルと台湾ドルに対してインド・ルピーとインドネシア・ルピアをオーバーウェイトとしてきた。今回、このキャリー収入を重視する投資テーマに対し、さらにスウェーデン・クローナに対するブラジル・レアルのオーバーウェイトを追加した。
  • また、ドル円の予想においては円高のペースを遅らせたが、今年も引き続き対ドルで円高基調との見方を維持する。この判断に基づき、グローバル戦略的資産配分において日本株式をヘッジせずに保有することを推奨する。

現在の低金利、低ボラティリティ(変動性)の環境下では、ディレクショナル・トレード(市場動向の方向性に賭ける取引)の多くは苦戦が予想される。主要中央銀行の大半が超緩和的な金融スタンスを維持するとみられ、当面は米連邦準備理事会(FRB)による追加利下げの可能性がリスク要因となるだろう。さらに、この緩和政策によりボラティリティも抑制されている。こうした低金利・低ボラティリティ環境は、為替市場の投資家にも影響が及ぶ。例えば、各国中央銀行が今後も金融市場を守る姿勢を維持し、市場参加者が景気下支えには追加利下げが効果的だと考えている場合、市場の動く方向を予想してヘッジをせずにポジションを持つことは有効な戦略であるとは言い難い。こうした状況から、目先ユーロ/米ドルが大きく上昇することはないとみている。だが一方で、欧州中央銀行(ECB)は超緩和策を続けており、仮に市場でリスクオフ・ムードが高まればFRBも追加利下げに踏み切る可能性があることから、ユーロ/米ドルの下落余地も同様に小さいとみられる。結局のところ、対米ドルでユーロが上昇するのは、欧州経済が回復しECBによる緩和バイアスの見直しが議論される場合に限られるだろう。しかし現時点では、年後半まではその可能性は低い。

こうした見方に対する唯一の例外は、英ポンドである。我々は英ポンドを対米ドルでオーバーウェイトにする。これは、英ポンドが現状で割安水準にあること、英国のEU離脱(ブレグジット)交渉の行方をめぐる下振れリスクが過度に織り込まれていると判断されること、また、今年予想されるイングランド銀行による利下げの程度は限定的だとみられるためである。我々はまた、スウェーデン・クローナに対するブラジル・レアルのオーバーウェイトを追加して、グローバル戦術的資産配分における現在のキャリー戦略を強化した。我々はインドネシア・ルピア、インド・ルピー、ブラジル・レアルなどの景気動向に敏感な高金利通貨を推奨する。一方、調達通貨としては、リスクが急激に反転した場合に緩衝材としての役割も果たすと考えられるスウェーデン・クローナ、豪ドル、台湾ドルが有効と考える。よって、キャリー収入を目的とした現時点での通貨バスケットは、豪ドル、台湾ドル、スウェーデン・クローナに対するブラジル・レアル、インドネシア・ルピア、インド・ルピーのオーバーウェイトで構成されている。

House View レポートの紹介



資産運用はUBS証券へ

UBSウェルス・マネジメントでは、富裕層のお客様の資産管理・運用を総合的にサポートしております。日本においては、2億円相当額以上の金融資産をお預け入れくださる方を対象とさせていただいております。

(受付時間:平日9時~17時)