5日に実施されたジョージア州の米連邦議会上院議員選の決戦投票は、接戦の末、民主党が2議席獲得した。これにより、民主党は上下両院を制することとなった。6日の株式市場では、S&P500種株価指数は0.57%上昇、一方でハイテク株が多いナスダック指数は-0.61%下落した。

より大きく変動したのは金利だ。米10年国債利回りは9bp上昇した。これは主にインフレ率上昇期待と、追加財政支出が予想されたことによる。S&P500種株価指数が上昇する中でハイテク株とグロース株(成長株)が下落したが、主な要因として金利上昇と長短金利差拡大が挙げられる。これらの銘柄は金利上昇に敏感である。一方、今回の動きの恩恵を受けたのは米金融銘柄で、6日の取引で4.4%上昇した。米ドルは夜間に20bp下落したが、その後戻した。

民主党が上院で法案の成立に必要な過半数を獲得する可能性が高まっているとの報道を受けて市場は予想通り変動した。金融市場は、ねじれ議会の誕生を織り込んでいたからだ。民主党が上院決選投票で2議席獲得したことで、上院の構成は民主党および共和党で50議席ずつとなり、ハリス次期副大統領が均衡を破る一票を投じることができるため、上院の支配権が民主党に移ることになる。

しかしながら、民主党が議会での主導権を握った場合でも、両党の議席数は僅差である。民主党候補のワーノック氏とオソフ氏がともに勝者として認定されれば、議会は財政調整措置を通じて、法人税と個人所得税の引き上げを行うことができるだろう。だが、特に民主党の中道派上院議員の中には議事進行妨害(フィリバスター)の廃止に反対を表明している議員がいることを考えれば、極めて革新的な法案を通過させることは難しいかもしれない。

投資見解

前号のElectionWatchレポートで指摘したように、ジョージア州の2議席を巡る決選投票は、政策実行上、非常に重要だ。我々はこれまでのレポートで、統一政府の誕生が財政支援策の規模拡大につながると指摘してきた。バイデン次期大統領は12月に可決された追加の経済支援策と2021年度予算案の包括案を「頭金」と呼んでおり、この発言から同氏が第1四半期に追加の財政支援を目指す方針であることがうかがえる。追加支援に対し、議員からの十分な支持を取り付けることができるかどうかにかかわらず、その議論によって長短金利差が更に拡大し、インフレ率上昇期待が高まると予想する。

我々は決選投票の結果が認定されれば、増税が実施される可能性があると考える。だがその範囲は、民主党やバイデン氏が目標としているよりも制限されるだろう。増税規模は、全体的な支出の増加規模と比べて小さくなる可能性が高く、2022年まで実行されないかもしれない。従って結果的に、バイデン氏の政策は景気を後押しするだろう。また増税には上院では全員、下院ではほぼ全員の民主党議員の賛成が必要になる。2017年に共和党が包括的減税法案を成立させるのに11カ月かかっている。民主党が増税に向けて過去に例のない一体感を維持することができるのであれば、法案成立の時期は少し早まるものの、2021年初めには進展しそうにない。さらに次期大統領はインフラへの再投資に繰り返し言及している。これにはグリーンエネルギー政策が含まれるだろう。我々はバイデン氏が短期的にこの政策により注力すると見ている。

よって、決選投票の結果を受けた相場変動は大きくなく、今後数カ月内のコロナ危機収束に向けた投資家の期待がより市場を動かす要素になると見込まれる。第2四半期に景気回復が加速すると見られる中、我々は米国株式全般に対し長期的に強気姿勢を維持しており、特に景気敏感株や中小型株が有望とみている。

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