Climber on the snow-capped mountain

今週の要点

1. 過去最高値を記録しても、調整間近ではない

S&P500種株価指数先物は先週、初めて3,000の大台に乗り、最高値を更新した。過去最高値をつけると、市場が調整に向かうとの懸念が広がりやすい。しかし、最高値を更新しても調整が近いとは限らないことは、株式市場の歴史が示している。1950年以来、過去最高値を記録した後の6カ月間でのS&P500種のリターンは平均で4.7%、それ以外の6カ月リターンの平均は4.2%だった。最高値更新後の急落も少ない。過去最高値をつけてから6カ月以内に5%以上下落する確率が10.7%であるのに対し、それ以外の場合は18.1%である。一般には、投資を継続することが結局は良好なリターンにつながる。最近の株式の上昇ペースが今後も続く可能性は低く、グローバル株式のバリュエーションは実績株価収益率(PER)ベースで20年間の平均を上回っているが、株式は債券に比べて魅力が高い状態が続いている。グローバル株式のリスクプレミアム5.8%は長期平均の3.5%を上回っており、我々の基本シナリオでは株式は徐々に上昇すると見込んでいる。

要点:リスクが高まり経済成長が不透明な環境の下、我々は欧州株式よりも魅力度の高い米国株式をオーバーウェイトとしている。

2. 次期ECB総裁に指名されたラガルド氏の課題

国際通貨基金(IMF) のラガルド専務理事が欧州中央銀行(ECB)の次期総裁に指名された。欧州議会がラガルド氏の指名を承認することはほぼ確実視されている。しかし、就任後はユーロ圏の金融政策のトップとして経済立て直しの難しい舵取りが待ち受けている。金融政策に関するラガルド氏の過去の発言は、ハト派寄りの姿勢を示している。しかし、ECB理事に指名された他のメンバーはタカ派寄りが多く、ラガルド氏が政策議論を主導するまでには時間を要するかもしれない。ECBには長引く景気低迷に対処する手段が限られている。主要政策金利はすでに‐0.4%と低く、米連邦準備理事会(FRB)と比べて政策余地が小さい。最近の統計は引き続き景気の減速を示している。7月8日に製造業購買担当者景気指数を発表したEU13カ国中、景気判断の節目となる50を上回った国は5カ国にとどまった。先週は市場参加者のインフレ率予想を示すインフレスワップ(5年先・5年物)が1.15%と、ほぼ過去最低水準にまで低下しており、ECBがインフレ率を2%目標に押し上げることが困難なことを示している。

要点:次期総裁の下、ECBは一段の金融緩和を進めると予想される。しかし、これによって戦術的期間(6カ月)の投資見通しが改善するとは考えにくい。よって、先進国の株式市場の中では、株価水準が経済のファンダメンタルズ以上に過大評価されている欧州株式のアンダーウェイトを推奨する。

3. 企業オーナーは分散投資により、リターン向上とリスク軽減が可能

企業オーナーの資産の大半は自身の事業に直結していることが多い。資本を集中させることで高いリターンを上げることが可能となるからだ。例えば、世界の富裕層の資産形成に関する調査結果をまとめた「2018 UBS/PwCビリオネアレポート」によると、2017年は89人の中国人と30人の米国人のビジネスオーナーがビリオネア(資産総額10億米ドル以上の富裕層)に仲間入りした。しかし、集中にはデメリットもある。たとえば、流動性が低下し、支出ニーズを満たせない可能性がある。1つの国、通貨、資産クラスにエクスポージャーが集中しすぎるおそれもある。キャッシュの創出が長期のリターンより優先された場合、投資判断を誤り資産形成に響く可能性もある。自社株を売却すれば課税対象となる利益が発生することもあるため、分散投資は難しいかもしれない。しかし、このように課題があるとはいえ、企業オーナーにおいては、配当、借入等の節税効果が高い方法で資金を事業から切り離し、自社株以外の金融商品に投資してエクスポージャーを分散することができる。ポートフォリオの分散化に加え、保有資産を調整して、特定の地域、セクター、通貨ペアへのビジネスの過度のエクスポージャーを一部相殺することもできる。自身の事業に破壊的な変革をもたらすビジネスへの投資を検討してもよい。例えば、過去5年間で百貨店企業の価値が半減したのに対し、インターネットを利用した電子商取引企業の価値は約420%上昇している。

要点:企業オーナーは、自身の事業以外にも資産を振り向けることで、収入の大幅な変動を抑え、事業低迷からの回復も容易となり、親族や慈善事業への責任も継続して果たすことができる。外部への投資は事業機会を獲得し、将来のプロジェクトに備えた資金を準備し、資産を守ることにも役立つ。

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