キャッシュの魅力がさらに薄れる
FRBが利下げを実施した結果、米国の実質金利はゼロに近付いたが、ユーロ圏、日本、英国ではキャッシュの実質リターンがすでにマイナスになっている。
今週の要点
今週の要点
1. FRB、金融政策の先行きで意見が分かれる
米連邦準備理事会(FRB)は9月18日、25ベーシスポイント(bp)の利下げを 実施した。市場は利下げをすでに織り込み済みだった。一方、金融政策の 先行きについて米連邦公開市場委員会(FOMC)の意見は分かれている。 年内の再利下げの可能性が高いとするFOMC参加者は半数に届かなかっ たが、FOMC参加者の金利予測分布 「ドット・プロット」は今後数年間、金利 が下がるより上がる可能性が高いことを示している。とはいえ、全部で17の うち7つのドットは年末までに25bpの追加利下げを示唆しており、通商政策 と成長の鈍化に関する懸念が再燃した場合には、FRBが行動に出る可能性 はある。
要点:我々は景気回復が難しい状況と判断できる証拠が出てくるまでは、FRB が年内は金利を据え置くという見解を維持する。FRBの利下げを受けて、我々 は金利獲得を狙うキャリーの戦略を推奨する。我々は一部の新興国通貨、米 ドル建て新興国国債、欧州投資適格債をオーバーウェイトとしている。
2. 利下げを受けて、キャッシュの魅力がさらに薄れる
FRBが利下げを実施した結果、米国の実質金利はゼロに近付いたが、ユー ロ圏、日本、英国ではキャッシュの実質リターンがすでにマイナスになってい る。ここ1週間に開催された米国、スイス、日本の中央銀行の政策決定会合 は、低金利が長期化することを浮き彫りにした。こうした環境下では、キャッ シュを持ち続けることでコストが高くつくおそれがある。例えば、市場が織り込 んでいる今後の金利推移が正しい場合、平均インフレ率を0.3%とすると、キ ャッシュで預け入れた100万スイス・フランは30年後には838,700スイス・フラ ンに目減りすることになる。にもかかわらず、多くの投資家は依然としてキャ ッシュを不確実な時期の安全資産と見なしている。しかし、中長期の時間枠 で、資産クラスと地域の分散投資を行うことで、リターンを犠牲にせずに投資 リスクを引き下げることは可能だと我々は考えている。週単位では、キャッシ ュに投資(米ドル建て)することで株式(S&P500種株価指数)よりも成果を上 げる確率は約43%である。しかし過去のデータから、20年間の期間について その確率はゼロだった。
要点:支出のニーズを満たすのに十分なキャッシュを保有することは、我々が 提唱する資産運用へのアプローチであるLiquidity(流動性の確保)、Longevity (老後への備え)、資産承継の準備(Legacy)* において重要なポイントである。 しかし、キャッシュへの過剰な配分は、運用目標の達成を難しくするだろう。
*時間軸は様々です。戦略はお客様の長期目標、中期目標、適合性によって 変わります。このアプローチは、資産構築あるいは何らかの投資利益の達成 を約束または保証するものではありません。
3. 化石燃料株からの資金流出が気候変動を抑えられるとは限らない
マイクロソフト創業者ビル・ゲーツ氏は先週、ファイナンシャル・タイムズとの インタビューで、化石燃料株を売却しても、二酸化炭素を大量に排出してい る企業の資金が枯渇することはなく、気候変動に与える投資家の影響は「ゼ ロ」だと述べた。我々は、化石燃料株を売却することで、投資家は価値観に 沿ったポートフォリオ構築をすることが可能だと考えている。一方で、我々は 環境と社会に役立つより効果的な方法も知っている。第1に、環境、社会、ガ バナンスの課題に直面している企業に積極的に働きかけ、こうした企業に改 善を促すこと。このアプローチは有効である。Ceresが集計・分析したデータ によると、2013年から2018年にかけて提出された779件の気候関連の株主 提案のうち、41%は企業側がこの分野において十分な進歩を遂げた、また はそれを約束したことを、株主と企業側が認めたことで撤回されている。第2 に、二酸化炭素排出削減を目指す、革新的企業に投資すること。我々は再 生可能エネルギーのほか生物多様性をこれ以上傷つけることなく、都市化や 人口増に対応した食料確保の問題に取り組んでいる企業に投資機会がある とみている。
要点:投資家によるエンゲージメント戦略は、環境と社会に恩恵をもたらす可 能性を秘めている。再生可能エネルギー、エネルギー効率、大気浄化、二酸 化炭素の排出削減、革新的農業など、我々の中長期投資テーマの一部はコ モディティ市場の破壊の恩恵を受ける好機にある。グリーンボンドもコモディ ティ生産国の持続性プロジェクトに資金を提供する機会をもたらす。
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