今週の要点

新型肺炎から学ぶ

新型コロナウイルスの感染拡大は続いているが、欧米の株式市場は先週、過去最高値を更新した。ウイルス感染の収束時期を現段階で判断するのは時期尚早だ。だが、想定外の出来事への対応を誤れば長期投資で成功する確率も低下しかねない。そこで、感染拡大に対する市場の反応から学ぶべき点をいくつか挙げてみたい。まず第1に、投資を継続することが大切である。不確実な局面で売り抜けるのではなく、分散投資で投資を続けることで固有リスクの軽減が可能である。第2に、航空会社やホテルなど感染拡大の影響が最も大きい企業やセクターへの過剰なエクスポージャーを避け、「自宅待機」の恩恵を受けるeコマースなどの銘柄を選択する。第3に、市場への段階的な参入を検討する。不確実性が高まる中、過去最高値水準にあるグローバル株式に資金を投入することに躊躇するかもしれない。その場合は、スケジュールに沿った段階的な購入を検討することを勧める。第4に、ヘッジ手段として金を検討する。金は今年に入って3.7%上昇しているが、感染拡大が収束し安全資産としての需要が薄れても、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)が金価格を下支えする。第5に、ファンダメンタルズに注目する。特にアジア(日本を除く)を始め、新興国市場全体のファンダメンタルズは良好であり、2020年は企業利益の2桁台の伸びが見込まれる。

要点:我々は新興国株式をオーバーウェイトとしており、特にアジアには長期的な成長余地があるとみている。投資タイミングのリスクを懸念する投資家には、資金を段階的に投入する戦略を推奨する。最後に、地政学的リスクに対するヘッジとしては金が有望とみる。

トランプ大統領に無罪評決、焦点は11月の大統領選へ

トランプ米大統領の弾劾裁判は先週、無罪評決で終了し、政治の注目点が11月の大統領選に移った。穏健派のピート・ブティジェッジ氏がアイオワ州で行われた民主党最初の党員集会でトップに立った。しかし、民主党候補の指名争いは混戦が続いており、富裕層増税、巨大企業に対する反トラスト法調査、薬価引き下げなどの政策を掲げる左派候補のバーニー・サンダース氏やエリザベス・ウォーレン氏が依然としてかなりの支持を集めている。アイオワ州党員集会での4人の主力候補への支持率は、穏健派(42%)と急進左派(44%)にほぼ二分された。選挙が近づくにつれ、規制強化に対する懸念からエネルギー、ヘルスケア、テクノロジーを中心とする主要セクターが大きく変動する恐れがある。分散投資やヘッジを通じてこうしたボラティリティ(相場の変動)への備えを検討することを勧める。

要点:過去23回の選挙サイクルによると、米大統領選が行われる年は一般的に株価は好調に推移する。ただし、選挙が投資家へのリスクとボラティリティを高める可能性もある。対応策としては、分散投資に加え、市場への段階的な参入や、変動が大きい市場に強いオルタナティブ投資を検討することも有効である。

勢いを増すサステナブル投資

廃プラスチックを科学的に分解して「元の」状態に近い素材に戻す技術が開発された。複数の英系大学の研究者が開発したこの方法はリサイクル素材の質を高めると期待されている。エレンマッカーサー財団によると、プラスチック包装材の量は2050年までに現在の4倍以上に増えると予想されているが、こうした進歩によって循環型経済への移行が進み、プラスチック包装材の急増を抑制するだろう。今後は消費者や企業、政府による持続可能性重視の姿勢が強まり、その動きを先取りする投資家が恩恵を受けると考えている。サステナブル投資を行うには主に3つの方法がある。第1に、伝統的な銘柄から持続可能な銘柄に切り替える。例えば、ポートフォリオの一部を米国債から国際開発金融機関債やグリーンボンドにシフトする。グリーンボンド等への投資は必ずしもリターンを犠牲にしないことは学術研究が示している。第2に、環境・社会・企業統治(ESG)問題を銘柄選定の基準として採り入れ、新たな市場の拡充や新たなバリューチェーンの構築に寄与する。最後に、気候変動や廃棄物、公害、ヘルスケアなどの特定の問題に着目した投資戦略により、ポートフォリオに自身の価値観を反映させることが可能である。

要点:「変革の10年」では変化への適応が求められる。だが一方で、高リターン が期待できる魅力的な投資機会を通じて、社会の変革に貢献することも可能 である。

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