好調が予想されるコモディティ
今年は資産価格の記録更新が目立つなか、金にも注目が集まっている。金は8月上旬に1オンス=2,051米ドルの最高値を付けた後、8月11日に1日の下落率としては7年間で最大を記録して1オンス=1,900米ドルを割り込んだ。しかし、金の利益確定は短期間で終わるとみられ、金以外のコモディティにも魅力があるとも考えている。
今週の要点
今週の要点
高値更新も、なお上値余地あり
S&P500 種株価指数は先週、新型コロナウイルスの感染拡大前の 2 月に記録した最高値をわずかに 0.5%下回る水準にまで戻し、トータルリターンでは前回の高値水準を超えた。一方、世界の株式は年初来の損失分を取り戻している。安値からの市場の上昇率は S&P500 種が 51%、MSCI AC ワールド指数が 48%にのぼっており、投資家の間には懐疑的な見方が広がっている。全米個人投資家協会が実施した調査によると、今後 6 カ月で株式市場が上昇すると予想している米国の投資家は全体の 23%にとどまっている。しかし、我々は新型コロナに関する基本シナリオと楽観シナリオの両方で株式はさらに上昇すると予想しており、これまで市場全体の上昇に出遅れていた銘柄がアウトパフォームする可能性があると見ている。これにはシクリカル株やバリュー株の一部が含まれる。今年に入ってから好調なテクノロジー銘柄へのエクスポージャーが多い投資家には、オートメ ーションやロボティクスなど、コロナ危機で加速したトレンドからの恩恵が見込まれる分野への分散投資も有効とみる。最後に、株価の史上最高値圏での推移に警戒感を持つ投資家には、 1960 年以降、S&P500 種が最高値を付けた 1 年後のリターンは 11.8%と、市場が最高値を下回っている時の 11.3%をやや上回っていることを念頭に置いていただきたい。
要点:世界の株式には一段の上昇余地があり、バリュー株とシクリカル株の一部が次の上昇局面を主導するとみている。
金は反落するもコモディティに上昇の可能性
金は先週 6%下落し、 1 日の下落率としては 7 年ぶりの落ち込みとなった。金はその前の週に史上最高値を記録していたが、一時 1 オンス= 1,900 米ドルを下回った。しかし、我々は利益確定は比較的短期間で終わると予想している。マイナスの実質利回り、政治的緊張、米ドル安が金を下支えしている。好調な推移が予想されるのは金だけではなく、世界の需要拡大と供給制約があいまって、貴金属、卑金属、エネルギーともに幅広く上昇するとみている。例えば原油については、石油輸出国機構 (OPEC)と非加盟国 (OPEC プラス)が歩み寄った結果、 6 月の世界の原油供給は日量 8,700 万バレルと 9 年ぶりの水準に低下した。エネルギー以外では、新型コロナウイルスの影響で今年の銅の供給は 3%以上減少すると予想される。
要点:低利回り、米ドル安、政治的不透明感が金の見通しを下支えしている。
サステナブル関連ファンドは運用資産残高が 1 兆米ドルに
モーニングスターのデータによると、今年 4-6 月期(第 2 四半期)のサステナブル投資ファンドの純流入額は 711 億米ドルに達し、運用資産残高は初めて 1 兆米ドルの大台を突破した。今回の快挙は、投資家がサステナブル投資に徐々に移行していることを示している。このシフトは新型コロナウイルスの感染拡大によって加速しており、外的ショックへの耐性が高いビジネスモデルに投資する重要性を浮き彫りにした。我々はこのシフトは今後も続くと考えている。近年、世界各国の政府が環境問題の解決に貢献する「グリーンプロジェクト」への支援を強化しており、ウォールストリートジャーナルの分析によると、これまでに発表されたこうした取り組みへの財政支援は約 5,830 億米ドルにのぼる。サステナブル投資ファンドのパフォーマンスは好調で、サステナブル投資の魅力を一層高めている。モーニングスターによると、第 2 四半期はサステナブルファンド 212 本のうち 56%が各カテゴリーの従来型ファンドのパフォーマンスを上回った。 2020 年上期で見ると、サステナブルファンドの 72%がモーニングスターの各カテゴリーの上位 50%に入っている。サステナブル投資は長期的視点でポジションを構築し、グリーンリカバリー関連企業に投資する上で非常に有効な手段であると考える。
要点:従来の投資戦略に比肩するリターン、 3 月の市場急落時に実証された底堅さ、投資で世界の変革に貢献できる機会などを踏まえ、よりサステナブルなポートフォリオへの移行を勧める。
好調が予想されるコモディティ
今年は資産価格の記録更新が目立つなか、金にも注目が集まっている。金は8月上旬に1オンス=2,051米ドルの最高値を付けた後、8月11日に1日の下落率としては7年間で最大を記録して1オンス=1,900米ドルを割り込んだ。しかし、金の利益確定は短期間で終わるとみられ、金以外のコモディティにも魅力があるとも考えている。
各国中央銀行の豊富な流動性が実体経済に広がっており、世界中で同時に底堅い景気回復に向かうものと予想される。この結果、先進国を中心にコモディティの需要が持ち直す一方、中国のコモディティ需要も好調が続くだろう。
第3四半期に入りコモディティ指数は順調に上昇しており、トータルリターンはブルームバーグ商品指数(BCOM)が9.9%、UBSブルームバーグCMCIが8%となっている。この上昇は継続し、幅広く分散されたコモディティ指数は今後12カ月間で15%近く上昇すると予想される。好調の要因は複数考えられる。
- 世界経済が回復するにつれ、コモディティは恩恵を受ける:我々の過去の分析を踏まえると、四半期のコモディティのリターンは経済成長の加速時に高くなる傾向がある。我々の分析では、30年以上のサンプルで見ると、先進国経済のGDPが加速した際にリターンは2倍以上に上昇した。ここで重要なのは、先進国でのGDP成長率がトレンドを上回るのを待ってからコモディティに投資したのでは遅いということだ。コモディティは経済サイクルの後期で好調に推移するが、マイナス圏からも含め経済活動の加速時に良好なリターンが見受けられる。
- 供給難と低い在庫水準が複数の主要コモディティの価格の上昇につながる:原油市場が典型的な例である。原油については、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国(OPECプラス)が歩み寄った結果、6月の世界の原油供給は9年ぶりの水準である日量8,700万バレルに減少した。OPECプラスが減産合意を順守する一方、原油の需要回復が続いていることから、市場は供給不足に陥り、石油の在庫が減少し始めている。エネルギー以外では、パンデミックによって今年は銅の供給が3%以上減少すると予想している。鉱山の操業停止や銅スクラップ不足を主因として供給減が起きているが、新たな鉱山での生産が始まることで、来年には小幅な供給増につながる可能性がある。最後に、経済の再開が続く中、コーヒー、ココア、砂糖などソフトコモディティの需要も徐々に回復することが予想される。
- 金には一段の上昇余地がある: 10年実質金利が史上最低のマイナス圏に低下した後反発したことを受けて、金は一時急落した。金の上場投資信託(金ETF)への資金流入が過去最大規模となり、金価格は大幅に上昇したが、これは反落前の価格の急上昇という文脈で捉えることができる。米連邦準備理事会(FRB)が名目金利を抑え期待インフレ率が上昇する中、我々は年末時点の金価格の予想を1オンス=2,000米ドルに据え置く。短期的には、特に地政学的緊張が高まった場合に、1オンス=2,300米ドルまで上昇する可能性がある。
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